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【オリンピック目前!】#4 馬術というスポーツ【馬を知ろうよ!】
3月に入り、少しずつ暖かくなってきました。
依然として続くコロナ禍で先が見えませんが、聖火リレーも始まり、東京オリンピックは着々と近づいてきていますね。
本当に開催されるのか、なかなか見通しが立ちませんし、開催されたとしても観客がどこまで参加できるのかわかりません。しかし、あるかどうかわからないかもしれないけれど、「馬術」というものに興味を持ったことは事実。
この記事では、オリンピックで唯一、男女の区別なく行われ、馬という生き物とともに挑む「馬術」というスポーツについてわかりやすく解説していきます。
管理人が国体など国内の大きな大会のスタッフとして働いた経験を生かして、基本的なことからオリンピック独自の情報までをまとめてみました!
この記事を読んで、馬術の扉を開いてみるとともに、本格的な馬術競技の大会がどのように行われるのかも知っていきましょう!
馬術競技スケジュール・競技会場
馬術競技は、その他の多くの競技と同じく、開会式翌日の7月24日(土)から始まり、閉会式前日の8月7日(土)まで行われます。
メダルマークがついている日は表彰式の日です。
馬術は、行われる3種目が日付がかぶらずに進行していきます。そして、団体と個人があります。
馬場馬術のスケジュール・競技会場
7月24日(土) | 17:00 – 22:15 | 馬場馬術団体兼個人グランプリ 1日目 |
7月25日(日) | 17:00 – 22:15 | 馬場馬術団体兼個人グランプリ 2日目 |
7月27日(火) | 17:00 – 22:40 | 馬場馬術団体グランプリスペシャル、馬場馬術団体表彰式 |
7月28日(水) | 17:30 – 21:25 | 馬場馬術個人グランプリフリースタイル、馬場馬術個人表彰式 |
馬場馬術の会場は、すべて馬事公苑です。
東京1964大会時にも使用された会場で、現在も馬事普及の拠点となっています。オリンピックに向けて改修・拡張工事が行われ、新しく生まれ変わりました。収容人数は9,300人!
総合馬術のスケジュール・競技会場
7月30日(金) | 8:30 – 11:00 | 総合馬術馬場団体兼個人 1日目 – 1組 |
7月30日(金) | 17:30 – 20:10 | 総合馬術馬場団体兼個人 1日目 – 2組 |
7月31日(土) | 8:30 – 11:00 | 総合馬術馬場団体兼個人 2日目 – 3組 |
8月1日(日) | 7:45 – 11:10 | 総合馬術クロスカントリー団体兼個人 |
8月2日(月) | 17:00 – 22:25 | 総合馬術障害団体決勝及び個人予選、総合馬術障害個人決勝、総合馬術団体&個人表彰式 |
総合馬術の会場は、クロスカントリーのみ海の森クロスカントリーコースで、それ以外は馬場馬術と同じく馬事公苑です。
収容人数は、16,000人!
障害馬術のスケジュール・競技会場
8月3日(火) | 19:00 – 22:45 | 障害馬術個人予選 |
8月4日(水) | 19:00 – 21:40 | 障害馬術個人決勝、障害馬術個人表彰式 |
8月6日(金) | 19:00 – 22:05 | 障害馬術団体予選 |
8月7日(土) | 19:00 – 21:30 | 障害馬術団体決勝、障害馬術団体表彰式 |
会場は、馬場馬術と同じく馬事公苑です。
障害馬術は、走行時間(馬場馬術は10分)が数分で短いこともあって、馬場よりも遅い時間に始まり、出場人数が多い予選でも4時間程度、決勝は3時間弱で進行予定です。
馬術競技の解説
先にも述べたように、馬術はオリンピックで唯一、人と動物が一緒に取り組む競技です。足りないところを人と馬で補い合って演技するので、他の競技と比べて選手の年齢層が非常に幅広いです。
リオ五輪障害馬術のチャンピオンであるニック・スケルトン選手(イギリス)は出場時58歳。馬術史上最高齢の金メダリストに輝きました。
また、男女の区別がないというところも大きなポイント。表彰台に女性だけが並んでいるという光景も珍しくありません。
ここからは、オリンピックで行われる以下の3種目それぞれについて解説していきます。
- 演技の正確さや美しさを競う《馬場馬術》
- コース上に設置された障害物を飛越しながらミスなく早く走行する《障害馬術》
- 馬場と障害の2種目にダイナミックなクロスカントリー走行を加えた3種目を同じ人馬で戦い抜く《総合馬術》
馬場馬術
馬場馬術ってどんな競技?
馬場馬術は、20m×60mの長方形のアリーナの中で、馬の様々なステップや図形を描くような動きの正確性と美しさを競います。
まずはこの動画を見てみてください。
これは、ロンドン五輪チャンピオンのシャーロット・デュジャルダン選手(イギリス)とヴァレグロ号の自由演技です。
90.089%という好成績を記録しました。
オリンピックも含めた高いクラスになると、演技内容が決まっている「規定演技」と、選手が演技の構成をして音楽に合わせて行う「自由演技」があります。こういうところもフィギュアスケートと似ていますね。
競馬が「速く走る」という馬の本能的な部分を特化させたスポーツだとすると、馬場馬術は野生では絶対にやらない動きを、いかに馬自身が自発的にやっているように魅せられるかが大切になってきます。「馬がダンスを踊っているように」とよく言われますが、これが馬場馬術の究極的な目標です。力や恐怖によって動かすのではなく、馬自身が納得した上で、楽しく演技をしてもらう
馬場馬術は、とても複雑で難しい動きを馬に求めることになるので、地道な調教と人馬ともに強靭な忍耐力が必要です。馬術を嗜んだことがある人であれば、トップレベルの人馬の演技が、そこに到達するためにどれだけの積み重ねがあるか想像できて途方に暮れてしまうかもしれません。(笑)
具体的には、左右の肢を深く交差させる横運動「ハーフパス」、その場で足踏みをするような「ピアッフェ」などの芸術的な動きがあります。
馬場馬術の面白さって?
馬場馬術は、他の障害や総合に比べると少し魅力が伝わりづらいかもしれません。
しかし、オリンピックレベルとなると話は別です。「馬ってこんなことまでできるの!?」と驚かれることは間違いないでしょう。
馬場馬術では、エレガントかどうかというところが非常に重視されますが、トップクラスの人馬の演技は「これぞ馬術!」というような気品に満ちています。
ただ、選手や馬の表情を見ているととても集中しているのが伝わってきます。
人の方は、馬への細かい指示を正確に伝えるのはもちろん、馬がその動きを実現しやすいようにバランスをとって乗らなければいけません。そして馬の方は、指示を受け取り、それを正確に実行しなければいけません。
そういったことに注目して演技を見てみると、一つ一つの動きにたくさんの情報がつまっていることが伝わってくると思います。人馬が神経を研ぎ澄ませている様子を、観客が緊張感を持って見守る、というのが馬場馬術の観戦です。
選手の着用している燕尾服も、より一層優雅な雰囲気を盛り上げます。
馬場馬術の採点基準・方法
「規定演技」、「自由演技」とも、演技の項目ごとに10点満点で採点され、成績は得点率で表示されます。世界トップの人馬の演技では、ほぼ満点と言える90%を超えることもあります。
複数の審査員が、アリーナのさまざまな場所に配置されたジャッジボックス(審査員席)に入り、あらゆる角度から演技を評価します。見る角度によっては評価がかなり分かれることもあり、その場合は主審を中心に話し合いを行い、公正に判断を下します。
審査員がつけた点数をセクレタリー(書記のような役割)が、以下のようなジャッジペーパー(紙媒体とは限らない)に記入します。
馬場馬術の有力選手は?
馬術サイトAtoZinbaよりナショナルチームに所属している選手を紹介しています(障害と総合も同じく)。
障害馬術
障害馬術ってどんな競技?
まずはこちらの動画をご覧ください。
大会全体の映像なのでとても長いのですが、飛ばしたりして断片的に見ていただければと思います。
障害馬術は、アリーナと呼ばれる競技場内に設置された13~15個の障害物を、決められた順番通りに飛び越し、より早くゴールすることを競う種目です。
オリンピッククラスの競技会の障害物では、高さ160cm、幅(奥行)2mを超えるものもあります。
障害物は大会によって趣向を凝らしてあり、開催場所にちなんだ装飾がされていたりするので、そういった点にも注目です。
障害馬術の面白さって?
障害馬術は、より早くゴールするためのコース取りや飛び越すタイミングを選手が素早く的確に判断し、その判断に馬が瞬時に反応できるかどうかがポイントとなってきます。
選手によってコース取りは微妙に違ってきます。そして、競技が進行していくにつれ、どのコースが最良なのかが観客にもわかってきます。次の選手はそのコースを取れるのか、はたまたさらにいいコースを開拓するのか、注目が集まります。
障害競技は、バーを落とすのか、落とさないのか、会場中が固唾を飲んで見守っています。
クリアラウンドしたり、バーを落としてしまったときに会場全体が一喜一憂するのも障害競技ならではの雰囲気です。
障害馬術の採点基準・方式
障害物を落とすと減点され、障害前で馬が止まってしまったり(拒止)する反抗は2回目で失権となってしまいます。
また、障害間を通過する時間にも制限時間があるので、それを超過すると減点や失権につながります。
規定時間内に完走した上で、減点が少ない人馬が上位となります。
障害馬術の有力選手は?
- 副島(御護守) 将太さん
- 川合 正育さん
- 川口 雅美さん
- 齋藤 功貴さん
- 佐藤 英賢さん
- 杉谷 泰造さん
- 高田 崚史さん
- 武田 麗子さん
- Haase 柴山 崇さん
- 平尾 賢さん
- 福島 大輔さん
- ポーリー・カレンさん
- 桝井 俊樹さん
- 吉澤 彩さん
総合馬術
総合馬術ってどんな競技?
総合馬術は、馬場馬術と障害馬術にクロスカントリーを加えた3種目を同じ人馬のコンビで行い、合計減点の少なさを競う複合競技です。
馬場→クロスカントリー→障害の順で3日間かけて行われます。
少し前までは、総合馬術における馬場のことを調教、クロスカントリーのことを耐久、障害のことを余力と呼んでいました。このことからもわかるように、馬場は馬をどれだけ仕上げられているか、クロスカントリーは難しいコースをどれだけ耐えられるか、そして障害は最終日までどれだけ余力を残せているか、ということを審査しています。
そして、総合馬術を語る上で欠かせないのは、なんといってもクロスカントリーです。
自然の地形を活かしたコースに、丸太や池、竹柵、水濠、乾壕などのバリエーションに富んだボリュームのある障害物が設置され、人馬一体で駆け抜けます。大きな大会になるとコースの全長は6kmを超え、障害物の数は30~40個ほど。それらを飛越しながら分速570m(時速約30km)ものスピードで走ります。
人馬ともにタフさと勇気が必要とされ、信頼関係が試されるクロスカントリーは、大きな見どころだと言えるでしょう。
総合馬術の面白さって?
総合馬術の特徴は、クロスカントリーはもちろんですが、3日間かけて複数の種目をこなすということです。
どの種目が得意かは人馬によって異なります。
馬場で優雅な動きを見せた馬が、障害で力強いジャンプをしていたりするのは、総合馬術でなければ見られない光景です。
また、馬のコンディションをどのように調整してくるのか、というところも大きなポイントになってきます。
各人馬が、どんなところに力を入れてくるのか、日によってどう変わってくるのかというところに注目すると、競技を流れとして見ることができて、より楽しめると思います。
総合馬術の採点基準・方式
3種目それぞれが減点法で審査され、総減点が少ないコンビが上位になります。
総合馬術の有力選手は?
馬術競技観戦に関するFAQ
馬術競技を観戦する上での疑問に答えていきます。
- どうやって応援すればいいの?
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馬は非常に敏感な生き物で、だからこそ高度な指示も理解することができます。競技中は、特に神経を研ぎ澄ましていて普段以上に過敏な状態です。特に馬場馬術は非常に神経を使う種目です。大きな声で声援を送ることは絶対にしないでください。パニックに陥ってしまう可能性もあり、そうなると馬だけでなく、騎乗している選手や近くにいるスタッフにも危険が及びます。静かに観戦しましょう。また、馬の視界に入る場所で突然大きな動きをしたりすることもNGです。
障害やクロスカントリーは、馬場馬術ほど厳格な雰囲気ではありませんが、人馬の邪魔にならないことを最優先した上で応援しましょう。
- どんな馬が出場するの?
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オリンピックや世界選手権クラスの大会の出場馬には、年齢制限があります。
障害は9歳以上、馬場と総合は8歳以上の馬でなければ出場できません。といっても実際は、技術や身体が成熟してきた10歳以上の馬がほとんどです。競走馬のピークが4〜5歳で、多くは6歳頃引退することを考えると馬術で活躍する馬の年齢は高いことがわかります。
心身ともに充実し、高い能力を持つ優秀な馬たちが魅せる演技に注目してください! - より楽しむポイントは?
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選手のSNSなどをチェックしておくのはおすすめです。最近は馬術界でもSNSを使って情報を発信する人が増えているので、選手が普段何を思っているのかを知ったり、トップ選手同士の交流を垣間見ることができます。
また、参加した大会の成績や動画を載せている人もいるので見てみると興味深いですよ。
いかがだったでしょうか???
馬術というスポーツは馴染みが薄いでしょうが、想像以上に面白い世界です。
この記事が扉を開く、そんなきっかけになったら幸いです。
まだまだ奥が深い馬の世界の話を用意しています!次回もお楽しみに!!!
せシうださんの馬が好きだという気持ちを感じながら、オリンピック競技である馬術について、すがすがしく知ることができました。馬術って面白いですね。
まずい棒さん、コメントありがとうございます!
しっかり読んでいただいたようで嬉しいです!馬術の魅力が伝わる一助になっていたら幸いです。
まずい棒さんの活動にも生かされますように!