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【馬を知ろうよ!】シリーズ #3-2 馬の行動学(後編 相対的な行動)
馬の行動学の後編は、馬の相対的な行動についてです。
母と子、馬と馬、ヒトと馬。
いろいろな間柄の中で、馬はどのような行動をとるのか。学んでいきましょう!
馬の母子行動
馬の妊娠期間は平均340日程度です。
出産は以下の3期に分けることができます。
第1期:4時間程継続する。母馬は落ち着きがなくなり、時折腹部をふりむき、尾を会陰(えいん)部に打ちつけたり、立ったり座ったりを繰り返す。転移行動的な採食行動が見られることもある。しばしば発汗・排尿が認められ、さらに乳頭から乳汁が漏出し、破水が始まる。
第2期:胎子を娩出する時期。約15分(10〜70分)で終了するが、初産馬は経産馬よりやや長い。胎子は、羊膜→前肢→頭部の順で娩出されてくるが、分娩が完了するまでの間で60〜100回の陣痛が認められる。
第3期:胎盤の排出期で、胎子に続いて通常1時間以内に娩出される。母馬は出産した子馬を30分程度舐める。
馬のコミュニケーション
馬相互間のコミュニケーション
馬は、威嚇・服従・警告・欲求などを示す種々のコミュニケーションの様式をもっています。
これらは、表情・動作・音声・接触・臭いなどがあげられます。
もっともわかりやすいものは、威嚇における耳の動きで”耳をしぼる”と称されます。
この動きは、優位な馬が劣位な馬に対して餌の専有や移動を促すときに頻繁にみられます。また、母馬が子馬に接近してきた他の馬を追い払う際にも示されます。
その他、以下のような代表的な行動がみられます。
また、馬のグルーミングは、他の個体の体をなめたり噛んだりする行動で、親和的な意味をもっていると考えられています。
一般に、2頭が平行に向き合い、相互に行われます。
たてがみからき甲(背中の稜線において峰のように映る突起部)にかけてのグルーミングの頻度がもっとも高いです。
人と馬のコミュニケーション
ヒトが馬と関わるときには、騎乗するにしろ牽引するにしろ、ヒトの命令に馬が素直に従う行動特性を身につけていることが基本となります。
そして、馬飼養の歴史をもった土地ごとにさまざまな馴致(じゅんち)・教育法が、経験を基盤に発展してきました。
これらの方法には、おおむね愛撫および懲戒、すなわち報酬と罰が含まれていて、学習の観点からも有効な方法と判断されています。
動物の個性の形成には、出生の初期における経験が大きな影響を及ぼすことが知られています。
馬においても、少なくとも1歳における人に対する行動上の個性は、飼養されてきた牧場ごとに大きな差異が認められています。ただ、犬などと比べると、人に社会化する時期は限定的ではなく、成長のどの時点からでも可能なことが経験的に知られています。
異常行動とストレス
人為的管理下にある馬には、異常行動が認められる場合があります。
<さく癖>
歯で馬房の扉や飼い葉桶などを噛みながら空気を飲み込む癖。
<熊癖(ゆうへき)>
馬房の中で、身体を左右にゆらゆらと揺れさせる癖。
<前掻き(まえかき)>
前肢で地面を掻く動作。主に餌をねだるときに行うが、常習的になると悪癖になってくる。
<咬癖(こうへき)>
ヒトや馬に噛み付く癖。
<蹴癖(しゅうへき)>
ヒトや馬を蹴る癖。
さく癖や熊癖、前掻きなどは馬房の中で退屈した馬が行うことが多い悪癖ですが、噛んだり蹴ったりする行為はヒトとの信頼関係が築けなかったり、虐待されたことによって表れてしまいます。
その他にも、ヒトが騎乗中に馬が立ち上がってしまう癖などもあります。
悪癖のほとんどは、ヒトやヒトと関わることによって起こったものです。悪癖はたしかに困り物ですが、根気強く、愛情深く接することで改善の可能性は見えてきます。
前編・後編に分けた「馬の行動学」、いかがだったでしょうか??
馬の行動原理を知ると、自分が馬と接するときも「なんでこの子はああいう行動をとったんだろう」という疑問を解決する道しるべになると思います。
ぜひ、行動学の観点からも馬をみつめてみてください。
次回は、馬術というスポーツについてです。お楽しみに!!!
[…] 次回は、馬の行動学(後編)です!今回は、単体での行動についてが多かったですが、次回は性行動や母子行動、コミュニケーションについてなど相互的な行動について解説していきます […]